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刺繍について

皆様お久ぶりです。

蝉の声が賑やかで、日差しがまぶしい季節となりました。

私は、薄明け時(午前4時・・)ヒグラシの大合唱に少し悩みながらも、元気にすごしております。

夏で好きな時間帯は明け方と黄昏時。季節の移ろいを感じるこの時間帯がなんとも好きなのです。


さて、Instagram等を通うじてnui+の刺繍をご覧くださる方が増え、嬉しく思っております。

刺繍のことを、詳しくお話しすることもあまりなかったかなと思い、以下に綴ってみます。


刺繍をするために使用しているのは、昔ながらの「足踏みミシン」

(製造日等不明。おそらく70年くらいは経っているかと)

送り歯と押さえを外すことにより、針の下を布が自由に行きします。

いわゆるフリーモーションで、下絵は描かずに、布に直接、絵を描くように刺繍します。

配色も刺繍をしながら考えますので、いつでもアドリブ。

仕上がりは製作者自身ですら、刺繍した全体像を見るまでわからないという楽しみもあります。

縫い目は電動ミシン刺繍のように目が詰まることもなく、手刺繍よりも細かい。

不規則な線と点で描く刺繍はどこか温かみのある風合いです。

この独特な手法を「足踏みミシン刺繍」と呼んでいます。


相棒との出会いは2016年。それから独学で刺繍を始めました。

その1年前、横浜の小関さんの足踏みミシン刺繍の実演を見たことも大きく影響しています。

(刺繍を始める前は、2014年から丸い鞄を主に製作していました)


販売は不定期です。

これは会社勤めの傍らでの製作ゆえです。

刺繍作家として起業しないのかと良く言われるのですが、

元々その気はなく、日々の中で作れるものをぼちぼち作って、喜んでくれる人がいる限りは製作を続けて行きたいなと。

仕上がった作品は表舞台の上。表舞台の主役は手に取ってくださる皆様。

私は刺繍の裏舞台、「作家」ではなく、黒衣のような存在で居たいと思っています。(なので作品にはブランドタグ等ありません)


屋号「nui+」は「ぬい」と読みます。

縫いと繍いでもの作りをしたいという思いから名付けました。


さて、「作る」ことになったきっかけというのは、

複雑なのですが、(筆舌にし難い部分があり、)

まず、子供時代から手を動かすのが得意だったこと。

祖母が着物を愛していたことから 高校生1年生の時「和裁士」という職業を知り、全日制の高校を中退。

定時制高校に通いながらアルバイトをし、和裁を勉強しました。

奈良の和裁専門学校に進学し、2級和裁技能士を取得。

京都の法衣・袈裟の修繕をする会社に入社後、2年半ほどで体調を崩し、別の会社へ。

縫うことから離れたものの、やはり手を動かすのが好きで、2014年に「何か」を作り始めました。


それと、当時は自分の心の為にそうしたのかなと。

(マイナスなイメージな気がしてずっと隠していたことなのです)

何かをしていないと、潰れそうになるから。時が経つのを忘れさせるような没頭する時間が必要だったから。

一瞬離れた「縫う」ことが我が身を救うようでした。


人の死と向き合ったことが、「作ること」への要因の1つです。

全てのはじまり、その出来事から10年が経とうとする今、心の中には、その方が遺してくれた穏やかで暖かいものが存在するようになり、あの時苦しんだのは必然で、良かったのだとも思えるようになりました。

内臓が全て無くなりそうな程の悲しみも、今は私の大切な一部分であり、

泣いている女の子も、お気に入りのものが側にあれば、道端の花を見て綺麗だと感じた瞬間があるのなら、

少しは安らかさを取り戻すでしょうか。そんな気持ちで刺繍したり。

もちろん、何も起こらず幸せに過ごせるのが良いのだろうけど。

我々の日々にはさまざまな事象が起こるから、

そんな日々の隙間に、少しでも「綺麗だな」「嬉しいな」と思っていただける作品を作れたら。

刺繍を施すことは、願いや祈ることにも似ている気がします。


刺繍モチーフは道端の野花や、山で見つけた山野草、図鑑で心惹かれた草花。

ときどき愉快な動物たち。

お手に取っていただく機会がありました時には、

どうぞ、みなさまの「お気に入り」を見つけていただけましたら幸いでございます。








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